文芸部ブログ

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その12

◆太田高校文芸部との合同読書会&句会◆ 

 クリスマスの翌日の12月26日に、今年度2回目となる太田高校との読書会&句会が開催されました。今回の会場は太田女子高校の図書室です。太田高校文芸部の皆さん(4名)が風が吹き寒い中、こちらまで来てくれました。ありがとうございました!
 まずは句会です。今回のお題は「おくりもの」。贈り物、人を送る、言葉をおくる……それぞれ思い浮かぶものは様々ではないでしょうか。この句会では計24句が創られましたが、文字数の都合上、その中から得点が高かった数句を紹介しようと思います。

  好物を贈れど君は来ぬ盆よ

 点を入れた人の感想は「故人への思いを読んだのがしみじみ感じられる」「最後を『お盆』ではなく『盆よ』としたのがよい」などがありました。作者の意図としては感想にもあったように、故人への思いを詠んだものでした。「盆よ」の「よ」を入れたことについては素晴らしいセンスによって自然と思い浮かんだそうです。私はこれを初め、「(独身の一人暮らしの)子供に好物を送ったとしても、お盆さえ家に帰ってこない」という風に解釈していました。しかし、作者の意図やほかの人の感想を聞くことで納得の気持ちになり、この句がより素晴らしく感じられるようになりました。とても素晴らしい俳句だと思います。

  封を切り届いた通知桜咲く

 この句に対する感想には「前半の堅苦しい感じから『桜咲く』で一気に華やかになるのがよい」「『桜咲く』という言葉の選び方が素敵」などが上がりました。前半部分で合否の結果をためておいて、一気に最後に「桜咲く」。この俳句もまた素晴らしいです。2年と少し後の私も「桜咲く」の文字が見られるよう勉学に励まなくては。

  オリオンに見送られゆく夜汽車かな

感想には「星空が幻想的」「銀河鉄道が思い出される」などがありました。キラキラ光る星空のもと、線路を走る汽車。空気は澄んでいて遠くまで汽車の音が響きそうです。文字だけなのにパッと美しい情景が浮かぶのですから、俳句の力はすごいですね。

  風邪づてに叶わぬ届き哀,破る

この句は「風邪は人から人へと伝わるから、風邪も『おくるもの』すなわち『おくりもの』だよね」という解釈のもとで創られたそうです。感想には「対比がおしゃれ」「『哀,破る』に活字のセンスが感じられる」などがありました。「おくりもの」の捉え方もたくさんあって面白いなと思わせられました。今の時期にピッタリの俳句です。
 これらの句の他にもたくさんの素晴らしい句がありました。感想や解説を言いあい、俳句への理解を深めていくのはとても楽しいですね。全体の句会の様子としては、みんなでワイワイ仲良くしながら進められた感じです。つぎの機会を楽しみに、各自で研鑽をつみましょう。
 続いては読書会です。今回の読書会のテキストは「山村氏の鼻」です。尾崎翠という女流作家が1928(昭和3)年に発表した短編です。尾崎翠? 知ってます? わたしは知りませんでした。Wikipediaで調べてみました。尾崎翠は1896(明治29)年12月20日生まれ、1971(昭和46)年7月8日没。1915(大正4)年から1933(昭和8)年ころまで作家活動をしていたようですが、そのあいだはほとんど評価されていなかったみたいです。1933年に(はじめて?)発行された『第七官界彷徨』はときの文壇を瞠目させたということですが、そのときにはすでに尾崎翠は実家がある鳥取に引き込んでおり、その後、確たる創作活動にはとりくまなかったようです。「第七官界彷徨」を軸とした尾崎翠の評価は彼女が創作活動から遠ざかったり、死没したあとになって高まってゆき、知る人ぞ知る特異な小説家として全集やアンソロジーが出版されてきたんだそうです。
 さて、今回のテキストである「山村氏の鼻」ですが、そういった尾崎翠に対する知識があるとますます奇妙な小説であるような気がしてきます。異様な嗅覚の持ち主である山村氏が、その能力を逆手にとられて、手痛いしっぺ返しをくらう物語……と聞けば、話が弾みそうなものですが……わたしは、全然喋れませんでした!! なんでかなーと思ったのですが、よく思い返してみると、登場人物がどうしてその行動を取ったのかとか、行動の理由がなかなかわからなくて、全然感想を持てなかったんですよね。でもほかのみんなは楽しそうに喋っていて、ちょっとおいてけぼりをくった感じでした。残念。「もっと頑張らねば……!!」とつくづく思いました。おくればせながら、匂いに敏感な山村氏が自身の発する匂いに弱点があったという設定は尾崎翠らしい(と偉そうにいいますが)とおもいます!(当日いいたかったぁ)
 楽しい時間はあっという間に過ぎるものです。今回もまた、気づかぬうちに日が傾いてしまい、もっと話したいと思いながらも解散になりました。次回は春休みでしょうか。こんどはどんなお話を読んで、どんな句を作りましょうか。楽しみで仕方ありません。

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その11

「がんばるからっぽ缶」

 こんにちは。僕はアルミ缶です。今、道の端っこに転がっています。これで僕も晴れてポイ捨てゴミの仲間入り、ということでしょうか。
 ひとつだけ、元の持ち主さんの名誉のために弁解をするとするなら、多分あの人は僕のことをポイ捨てしようと思って道に捨てたわけではないと思うのです。
 ポイッと投げられるというよりも、むしろペイッと押し出されるような感覚がしたので、落っことされてしまったのだと思います。あんなに勢いよく落ちたのは自動販売機で買われたとき以来ですね。
 あ、言ってませんでしたね。僕、自販機出身なんですよ。
 そんなわけで、(おそらく)不慮の事故で道端のゴミとなってしまった僕は、どうすることもできずに道端で大人しくしているのです。少しだけ中に残っていた清涼飲料水が頭の飲み口からピタピタとこぼれている気がします。
 乾いたらベタベタになっちゃうかな。嫌だなぁ。
 そういえば、僕はリサイクルされるのが夢なんですよね。
 だから早めに拾ってもらわないと、汚いせいでただのゴミとして捨てられてしまうかもしれません。それでは困ります。
 誰か人間が近くを通って、僕のことを拾ってくれればいいんですけど、こんなにジリジリ地面を焦がすような太陽が照りつけていると、僕もアツアツになってしまって誰も拾ってくれないかもしれません。
 そもそもこの道は車ばかりが多く走っていて、あまり歩いている人間を見かけませんね。ここで拾ってもらうのは望み薄かな、と僕は風に乗って転がって行きました。ころころ。
 ころころ。一日かけて転がってきた先は、どうやら広めの歩道がある人通りの多い道のようです。ここなら拾ってもらえるかな、なんてほくそ笑みました。
 ですが、どうにも様子が可笑しいようです。たくさんの人が僕の前を通っていくのに、誰ひとりとして僕に見向きもしないのです。
「ッダッっッっっ!!」
 ほら、今だって小さな男の子が転んでいますが、誰も気にしていません。たしかに小さいと言っても小学校中学年くらいの年ではありますが、転んだときの異常なまでの声が気にならないものなのでしょうか?
 僕はまだ人間のまちは二日目ですが、なかなかにキマった声だと思いました。ですが、周りの人間たちは特に気にならないのでしょうか?
 無機物である僕が言うのもなんですが、もう少し周囲に関心を持つ余裕を持ったほうがよいのではないでしょうか。
「ヤッっ!!」
 あっ。転んでいた少年が起き上がって僕を蹴り飛ばしてきました。少し側面が凹んでしまった気がします。少しだけ飛びます。ひゅーん。転がっていきます。ころころ。
 道の端っこも端っこ。本当に人目につかないような影に追いやられてしまいました。これでは見つけてもらえません。
 どよーん、と落ち込んだ空気を醸し出していると、かさかさ、と何かが動く音がしました。
「やあ、君もこんなところに来てしまったのかい?」
 はい。あなたは誰ですか? ずいぶんと泥にまみれてしまって元のお姿がわからないのです。
「私はパックジュースの紙パックだよ。ぶどう味のね。子供向けキャラクターが印刷されていたんだけど、もう見る影もなくなってしまったよ」
 そうなんですね。実は、僕はリサイクルされたくて。こんな人通りのないところでは見つけてもらえなくて困ります。
「へえ、君はリサイクルされたいのか。珍しいね。私は人間に拾われるなんてまっぴらゴメンだよ」
 そうなんですか。考え方はそれぞれですからね。
「まあ、君が人間に拾われたいのなら、ここほど向かない場所はないだろうね。向こうに行ってみたら? ここよりも人が通るし、拾われていくやつもいくつか見かけたよ」
 わあ、ありがとうございます。行ってみますね。
「おう、気をつけてな」
 ころころ。転がります。
 コツン。
 おや、なにかとぶつかってしまいました。すみません、大丈夫ですか?
「あ、ああ大丈夫だ。気をつけろよ」
 先ほどパックジュースの紙パックさんに気をつけるように言われたばかりなのに、もう不注意になってしまいました。恥ずかしいです。
 あなたは、誰ですか? 元のお姿がまったく想像できませんね。もしかしてプラスチック製でしょうか?
「さあな。そう見えるってんならそうなんだろ。俺も俺がなんだったのかなんてわからねェよ。」
 そういうものなんですか?
「おー。落っこちてすぐの頃は仲間たちとくっついてひとつのなにかだったんだ。だが、いつの間にかバラけちまって、気がつけば自分がなんだったのかすらわからなくなっちまった」
 大変ですね。
「そうでもねェさ。ただ少し、……さみしいかもな」
 それなら、僕と一緒に行きませんか?
「何をしに、どこに行くんだ?」
 リサイクルされるために人間に拾われに、もっと人の多いところへ行くんです。
「さっきみたいに転がってか?」
 そうです。でも、あなたは転がれないですね。
「俺は平べったいからなァ」
 それなら僕の飲み口に入りますか? 少し狭いかもしれませんが、頑張れば入れると思います。
「こうかい?」
 ぐ、ぐ、と黒色のプラスチック片さんは僕の飲み口に体をねじ込みました。なんだか変な感じがします。
 それでは行きましょうか。
「おう!」
 転がります。ころころ。
 水たまりに落ちました。びしゃびしゃ。ころころ。転がっているうちに濡れていたところが乾いて、細かな泥汚れが張り付いたままになってしまいました。ころころ。
 ころころ。ころころ。そろそろ人通りの多い道になってきたでしょうか。黒いプラスチック片さん、そちらはよく見えていますか?
「ああ! たくさん人が歩いてるぞ! ここらでいいんじゃないか?」
 それならここで拾ってもらえるのを待ちましょう。
 ころころ。ころころ。と同じ場所をなんども行ったり来たり、転がって待ちます。
 早く拾ってほしいなぁ。
「そもそもお前はなんでリサイクルされたいんだ?」
 ああ、その話ですか。僕が自動販売機の中にいた頃、上の列にいたコーラ缶の先輩が言っていたんです。彼は、彼女かな。まあ、先輩はリサイクルで作られたアルミ缶らしくて、リサイクル経験者なのです。「リサイクルされるってのは、かなり面白いんだ! 自分が自分でなくなって、それで新しい自分に変わっていく、あの感覚は一回経験したらもう忘れられないよ。怖いって言うやつもいるけどな、そういうやつはホントに無機物生損してると思うぞ!」とかなんとか。
「それで、お前はリサイクルされたいのか。変わってるな」
 そうでもないですよ。自販機の中ではリサイクルされたい派が一番多かったんですから。
「……他にはどんな派閥があったのか聞いても構わないか」
 不燃ゴミとして埋め立てられたい派と可燃ゴミと一緒に捨てられて燃やされたい派、あとはとても少数派ですけどそのまま缶としてずっと保管されたい派がいましたね。
「…………」
 そんなことを話しているうちに誰かの足音が近づいてきました。茶色いピカピカした靴です。バサリと音を立てて真っ黒なスカートが翻りました。
「あーゴミはっけーん、てなにこれ? 飲み口になんか詰まってる、イタズラ?」
 明るい少女の声とともに僕たちは金属製のトングで掴み上げられました。ふわりと少女は顔を近づけて僕たちをまじまじと見ています。
「きったな、これはそのままゴミで出しちゃえばいっか」
 なっ、「そのままゴミで出す」とは分別されないということでしょうか!? 恐れていたことが現実になってしまいました。
少女は僕たちを透明なビニール袋に入れようとしています。逃げましょう! と飲み口の黒いプラスチック片さんに声をかけて、ペイッと少女の手から飛び出しました。
「あ、っちょっと!」
 少女の驚いた声がしますが、思いっきり無視をして転がり続けます。なんとしてもリサイクルされるために!
 ――――こうして、アルミ缶と黒いプラスチック片のリサイクルを求める旅が始まったのだった。

 

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その10

 不覚にも風邪を引いた。コロナウイルスである。周りの人々がインフルエンザに倒れ伏していく中、何故私はコロナウイルスなんかに罹っているのであろうか。
 まあ、学校にも行けないしで時間も余っていることだから、本でも読もうかと、ベッドの中から手を伸ばして積読から一冊の本を取り出して開く。
 思えば最近、忙し過ぎたのだ。だから本を読む時間を取れなかったし、体調も崩す。感染経路にいまいち心当たりがないけれど罹ってしまったものはしょうがない。
 家族全員が出払って静まり返っている家の中、私の部屋の中だけにペラリペラリとページをめくる音が響く。どれだけ本を読み続けても怒られない、至福の時間。
 しかし、そんな時間に影が差す。寝っ転がって本を読む弊害が現れ始めた。まず、横を向いて寝っ転がり本を読むと、上側の腕が痺れる。疲れすぎてプルプル震えてきた。
 次にあお向けになる。今度は両腕が痺れる。肩も痛い。サイアク。
 うつ伏せになって背筋を使って上半身を持ち上げながら本を読んでみる。両腕も疲れるし背中も疲れる。これもだめ。
 もう座って読むかと、身体を起こせば急に頭がクラクラしてくる。そうだ、私は病人だった。
 諦めて横向きに寝転がって本を開く。熱のせいかなんだか文字を読んでも頭に入ってこない。何が書いてあるのかはわかるのに、理解ができない。文字の奥にある景色や、顔や、声が、まったく感じられない。
 なんたる不覚。記憶にある限り文字を読まなかった日はないと断言できる、この私が!
 本が読めないとわかると、なんだか悲しくなってきた。しくしくと、涙を流していると、だんだん眠くなってきた。

 ハッ、と意識が覚醒した。気が付かないうちに眠っていたらしい。眠っている間に汗をたくさんかいたようで、身体が随分とスッキリした。熱も下がったようだ。頭にかかっていた霧が晴れていったような気分。
 寝起きで震える手を枕元の本に伸ばす。本を開いた。文章に目を向ける。
 読める。
「はは、」
 やっぱり、物語が読めるって素晴らしい。

 みんなは病気に気をつけてね。

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その9

総文祭の報告です♡

令和6年10月26日土曜日のお昼過ぎ、わたしたちは「関東と信越つなぐ」高崎市にいました。「第30回群馬県高等学校総合文化祭文芸部門交流」に会参するためです。「金山」と「呑竜様」の街太田発11:16の「銘仙織り出す」伊勢崎行きにのり、伊勢崎でJR両毛線にのりかえて、1時間とちょっと、高崎は薄曇りでした。会場となっている群馬音楽センターまでは徒歩15分くらい。総文祭に参加するらしい高校生がたくさん歩いていました。開場前にお庭のベンチで優雅にランチと洒落こみたかったのですが、「はやく食べて準備を手伝って」と顧問のY先生にせかされてのんびりしていられませんでした。わたしたちは幹事校となっている太田高校文芸部をサポートすることになっていたのです。太田の生徒はすでに到着し、会場の設営をしていました。大慌てでご飯を食べ終えたわたしたちは、交流会でつかう「名札」を三角におってセロテープでとめる作業を任されました。交流会ではグループごとの司会と進行も仰せつかっています。どきどきの「晴れ舞台」です。

まずは「2024年度第19回 群馬県高校生文学賞」の表彰式です。散文部門、詩部門、短歌部門、俳句部門、同人誌部門で、のべ30人5校が表彰されました。そのなかに、われらが長山穂乃花さんが含まれています。誇らしいかぎりです! 長山さんが受賞の喜びをしたためてくれました。

 満腹からくる眠気に負けそうな穏やかな昼下がり。そんな眠気をかき消すほどの緊張が、私に背筋を伸ばさせる。
 今日は総文祭の表彰式だ。生まれて初めて、私の作品が誰かに評価された証をもらえるのだ。そう考えると緊張を上回るワクワクとドキドキが混ざった喜びが胸のあたりを暖かくする。
 静かな会場の外から賑やかな演奏とたくさんの人のざわめきがぼんやり伝わってくる。表彰は部門別に行われるらしい。右隣の列の人たちが名前を呼ばれて前へ出ていった。私が応募したのは散文部門。呼ばれるのはこの次だ。
 前に出た生徒たちは、ひとりひとり名前を呼ばれて賞状を手渡されている。すべての人に賞状が渡ると、みんな席に戻ってくる。
 散文部門の私達も呼ばれる。前も後ろも知らない、他校の生徒だ。せめて同じ学校の仲間たちに挟まれていたのなら、この緊張もいくらかマシだったろうに。
 席を立つ。
 少しだけ震える指先を抑えて前へ向かう。
 私の名前が呼ばれた。
 大きな賞状が渡される。たしかに私の名前が書いてある。私だけの賞状。
 ソワソワする気持ちをそっと身体の奥に閉じ込めながら元いた席に戻る。すると、前の席に座っていた女子生徒は椅子の下に置いてあった自分の荷物を手に取ると、ふたつ隣の列の席へと移動した。散文部門だけでなく短歌部門でも表彰されるらしい。
 前へ出ていった左隣の人たちも賞状を手に戻ってきた。斜め前の子も荷物を持って俳句部門へ並んでいった。
 この場にいるうちのかなりの人数が複数の部門で賞を取っている。
 様々な形式の文字に触れたほうが良いのかな。もっといろんな文章を書いてみよう。
 新しい目標を見つけた、そんな暖かい秋の午後だった。

すばらしいことですね。わたしたちもおおいに励みになりました。

第二部は交流会です。文学賞で短歌部門の選者をしてくださった、歌人の石原秀樹先生をお招きして、「歌会(かかい、と言うそうです)」を開きました。参加者を五つのグループに分け、あらかじめ投稿してあったそれぞれに短歌から自分が気に入ったものを選び、感想を述べあう催しです。わたしたち太女文芸部はふたつのグループの司会進行を任されました。まずは短歌の書かれたプリントを配ります。時間をとって◎と〇をそれぞれ三つつけてもらいます。用紙を回収し、わたしたちが集計した結果にもとづいて、上位の短歌から、それをよいと思った人の感想を聞き、最後に作者の創作意図などを話してもらいました。とてつもなく緊張しましたが、「歌会」はとてもなごやかに楽しく展開し、充実した時間となりました。なにしろ、短歌についてひとの意見をきく、はなすという体験が新鮮でした。ひとつのおなじことばのつらなりなのに、ひとの感想はさまざまで、作者の描きたかったこととかならずしも一致するわけではありません。でもそれが「文芸」のありかたなんですよねぇ。

  

さいごに石原先生からいくつかの短歌をとりあげてもらい、講評をいただきました。じょうずな短歌をつくるためには、どんなささいなことでも五七五七七にしてみること。先生はその日コンビニにたちよったときのできごとをさらさらっと短歌にしていました。そういうことの積み重ねがことばの鍛錬になるというお話でした。なるほどなるほど。まずはやってみる、ということですね。

五つのグループのなかで得票数が一番おおかった短歌の作者が表彰されました。そのなかに太女文芸部の生徒も含まれていたんですよ! これまたすばらしい。名誉なことです。長山さんが書いているように、小説だけではなく、短歌に俳句に、わたしたち太女文芸部は、ますます精進しまーす。

わたしたちが投稿した短歌はつぎのとおりです。ひとり二首つくりました。できばえはいかがでしょうか?

 涼風を切って舞い交う赤蜻蛉秋の家路の束の間の夢
 記憶から声も姿も薄れゆく心を録画するカメラどこ
 四年前灰に濁った暗がりで崩れる白をただただ見つめ
 過ぎ去ればおぼろと消えてゆく君の記憶の端を留める夢を
 つぶやいた手加減無用合図してテスト開始の鐘が鳴り出す
 見開いたページの中のメッセージ古い本には誰かの記憶
 駅で待つ毎度秋は遅延だが定刻通り咲く彼岸花
 まげわっぱ蓋を開けると栗ご飯今年も来ました食欲の秋

 

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その8

「大森暁生展に行ってきたーーーーーー!」

9月15日、文芸部の石原さんが県立館林美術館に行ってきたそうです。企画展「霊気を掘り出す彫刻家 大森暁生展」をやっていて、100点を超える作品を見ることができたらしいです。一ヶ所をのぞいて撮影OKだったから、たくさん(というかほぼ全部)撮ってきたよ! と言って、私に見せてくれました。その中で、一番上手く撮れた、という写真と、一番気に入った作品の写真を送ってもらいました。

    

 左が上手く撮れたという写真、右が一番気に入ったという作品の写真です。「これが一番気に入ったやつ」と写真を見せてもらったとき、何とも言えない気持ちになりました。だって、血でできた蝶みたいな作品ですよ? どこが気に入ったのか聞けば、「綺麗だったから」とのこと。たしかにきれいだけど……。ちなみに、左側の写真の作品の全体はこんな感じです。

 

 ていうか、作品が写ってないのに上手く撮れたって……それでいいんか? ちなみに、彼女によれば、鏡を使った作品が多かったそうです。

この鶴や、                     この鳩のように、

               

 鏡を利用して生き物の全体を創っている作品がたくさんあったと。自分や他の人が写り込まないように撮るのが大変だったそうです。帰るとき、美術館の敷地内にあった池の、鯉の写真も撮ったそうですよ。かわいい。

 

わたしがいまいってみたいのはおなじく館林美術館で開催中の「スペインの巨匠•ミロ 版画の宇宙」です。土屋文明記念文学館でやっている「文豪・谷崎潤一郎 –美を追い求めて」も気になりますね。わたし谷崎潤一郎の小説が大好きなんです。「刺青」とか、シビれますね。でも高崎はちょっと遠いです。あーあ。