同 佳作 1名(1年生)
馬県高校生文学賞 散文部門(県高文連主催) 優秀賞 1名(2年生)
JOMO高校生小説(上毛新聞社主催) 最優秀賞 1名(2年生)
同 佳作 1名(1年生)
★令和5年度
群馬県高校生文学賞 散文部門(県高文連主催) 優秀賞 1名(3年生)
JOMO高校生小説(上毛新聞社主催) 佳作 1名(1年生)
★令和2年度
群馬県高校生文学賞 散文部門(県高文連主催) 優秀賞 1名(3年生)
JOMO高校生小説(上毛新聞社主催) 佳作 1名(1年生)
★令和元年度
JOMO高校生小説(上毛新聞社主催) 優秀賞 1名(2年生)
同 佳作 2名(2年生)
文芸部ブログ
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その58
日差しが照りつける八月上旬。部屋に謎の引力が生まれたように、私は外に出られなくなっていた。夏休みの課題にもなかなか手をつけられていない。それなのに、遊びの予定が入るとそちらを優先してしまう。やるべきことより、今やりたいことを選んでしまうのは、人間の性なのだろうか。
そんなことを考えていたとき、友達から一通のメッセージが届いた。
「今日、バーベキューしない?」
一瞬だけ課題のことが頭をよぎったが、すぐにその考えは消えた。せっかくの夏休みだ。夏は夏らしく遊び倒そう。そう決めた瞬間、終わっていない課題は頭の隅へ追いやられていった。
バーベキューができる河川敷まで、自転車を全力で漕いで向かう。刺すような日差しが肌に当たり、まるで我慢勝負を仕掛けられているようだった。それでも、自転車を走らせているときに通り過ぎる風は、暑さと湿気の中では意外と心地よい。脚が疲れて、だんだん動かしづらくなってきても、もう少しこのまま漕いでいたいと思った。
河川敷に着くと、器具を持ってきてくれた友達が先に準備を進めてくれていた。年に一度はバーベキューをしているらしく、火の起こし方などを教えてもらいながら、慣れない手つきで準備を進めた。
食材は、それぞれが食べたいものを事前に買っておき、当日になって見せ合うことにした。私は玉ねぎ、ピーマン、牛タン。友達はとうもろこし、ウインナー、かぼちゃを持ってきた。
慣れた手つきで火を起こす友達を横目に、私は野菜を切り続ける。しばらくすると炭の香りが漂い始め、食欲がどんどん湧いてきた。まずは焼けるのが早いウインナーとピーマンを網に並べる。定番の焼き肉のたれに加えて、変わり種として持ってきたワサビのチューブも試してみた。
これが意外にもウインナーによく合う。思った以上においしくて、箸が止まらなくなった。
ひとしきり食べ終えると、お腹はすっかりいっぱいになっていた。椅子に深く座り、少し傾き始めた太陽を眺めながら一息つく。普段ならなかなか話さないようなことまで、友達とゆっくり語り合った。
なんだか照れくさくなってきて、最後は川で少し水遊びをしてから片づけをした。
帰り道、今日一日のことを思い返しながら、自転車を漕ぐ。課題はまだ終わっていない。
明日は勉強ばかりすることになるだろうな。
そう思いながらも、不思議と後悔はなかった。夏は夏らしく遊び倒す。それも、きっと夏休みの過ごし方の一つなのだと思う。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その57
◆ふみかのSF的日常◆ 後篇
【どういうこと?】
わたしは百年後の後輩にむけてキーボードを叩いた。
【生成AIが作った物語が文化祭をのみこんでしまったんです】
なんですって! これはもしかすると「宇宙密室殺人事件」をしのぐおおごとなのでは?
「最高じゃない!」
「最悪じゃない?」
「未来の文芸部員が困ってるんだよ。先輩としては放っておけない案件でしょ」
「百年後の後輩ね。実感わかんわ」
わたしは腕を組んだ。
「迷宮化した文化祭、AI小説生成機。つまり物語的因果律が動いている」
「強引じゃないか?」
「事件にはジャンルがあるってこと!」
わたしは机を叩いて、栞を論破しようとした。
「推理小説なら謎を解けば出口。SFなら装置を止めれば解決。映画ならクライマックスまで突っ走る!」
「あんたにはついていけん!」
わたしは即座に返信した。
【どうしたら助けられますか】
【AI小説生成機を破壊してください】
【それはむりですよ。時間軸の矛盾をはらみます】
【おや、あなたはSF小説ファンですか?】
【そうです。大好きです。】
【わたしもです】
【未来人がSF好きって、なんかおかしいですね】
「そんな世間話してる場合か!」
栞のツッコミにうろたえたのか、返事が途絶えた。画面からウインドウも消えた。その瞬間、校内放送を告げるチャイムが鳴った。『文芸部員の折下ふみか、大至急、職員室まで来なさい』顧問のアシダ先生だ。
「……締め切りの件じゃない」
「たぶんね」
わたしは栞を従えて、職員室へ向かった。顧問のアシダ先生は椅子をくるりとまわして、ふたりを見あげた。
「本間さんもいたのか」
「はい、たまたま」
「で、要件はなんでしょうか?」
「演劇部がさ、文化祭でコラボしたいって」
「コラボ? 原稿の催促じゃなく?」
「それはまだいいよ。まにあうから」
「まにあうんですか」と意表を突かれた栞。
「まにあうよ。折下さんの遅筆をみこしているからね。で、演劇部の件だけど、脚本をかいてほしいんだって。いま、ホンを書ける部員がいないらしくてさ。手伝ってあげなよ」
わたしは栞の肩をつかむと、ぐらんぐらんゆすった。栞にはその勢いの意味が読めなかった。なになになに。栞を解放し、アシダ先生に向き直ったわたしは、わかりましたと頭をさげると栞を引きずるように、いや本当に引きずってコンピュータ室にもどった。
「……来たね」
「なにが?」
「時空は閉じたのよ」
「説明!」
わたしは創作ノートひらくと、乱暴に書きなぐった。「文芸部員は昼寝でも夢を見る2137」。
「あんた、授業中のうたたねでも夢を見るの?」
「わたしたちのSF的体験を芝居にするのさ」
「なにも解決していないのに?」
「書けば解決する。それが物語の必然」
窓の外では夕焼けがあかあかとにじむようだった。わたしはにやりと笑った。そのとたん、コンピュータの画面にウインドウが開いた。2137年からのメッセージである。
【物語を救うにはあらたな物語が必要です】
【つまり?】
【現在のあなたが、未来の私たちを救い出す物語を書くんですよ。そうすれば……】
【そうすれば、未来の物語が現在のメタ物語でひっくり返される! それをこっちの時間の文化祭で芝居として上演すれば効果テキメン!】
【スバラシー!!!】
わたしは栞そっちのけでキーボードを叩き始めた……
部誌の原稿もまだかたちをなしていないのに、ふみかは文化祭用の脚本をかこうとしているのか。私、本間栞は核心をつくその疑問を飲み込むことにした。ふみかは、おそらく、やりとげるだろう。ふみかは誰よりも物語のちからを信じている。そして、追い込まれるほどに実力を発揮する。わたしはそのことをだれよりも、折下ふみか本人よりも知っているのだ。
太田女子高校文芸部。歴史はあるけど、部室はない。だが想像力の置き場所には困っていなかった。(おしまい)
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その56
◆ふみかのSF的日常◆ 前篇
わが文芸部の歴史は太田女子高校の歴史そのものである。学校創設とほぼときを同じくして産声をあげた(らしい)。それなのに、部室はない。活動費はある(少ないけど)。今年は新入部員が9人もきてくれた(そのなかのひとりは2年生だよ)。総勢14人の大所帯である。文芸部はコンピュータ室の一角を借りてほそぼそと活動している。活動日は火曜日と金曜日。きょうは水曜日だからだれもいないとおもったのに、本間栞がきていた。
「どしたの?」
「それはこっちのセリフでもある」
「ここさ、穴場だから」
「うふふ、おぬしもワルよのぉ」
夏である。おもては酷暑である。どこもかしこも暑い。おおくの生徒は自習室に足を運ぶが、そのせいで混雑している。コンピュータ室をつかっているのは理科研究部情報班と文芸部だけ。部活のふりして勉強をしようというはかりごとである。
「栞ちゃんはなにするの?」
「数学の課題。めっちゃむずかしい。ふみかは?」
「わたしは部誌の原稿書き」
「あれ? 締め切りはきのうじゃない?」
「しーっ!」
「関係者はだれもいないけど」
「催促されるまで提出しないのが文豪ってものよ」
栞は鼻でわらった。
「で、どんなやつ書いてんの?」
「宇宙密室殺人事件」
「宇宙がそもそも密室じゃない?」
「そこが盲点なのよ」
「盲点じゃなく、弱点でしょ」
さすがは学年トップクラスの秀才、本間栞である。いうことが正論である。栞の指摘は聞かなかったことにして、わたしは創作ノートを開いた。そのとき、文芸部専用の古臭いプリンターが突然動き出した。ガガガガ、ウィーン。
「きゃっ」
わたしは栞と顔を見合わせる。そのあとの反応ははやかった。席をたつと、プリンターに駆け寄る。A4のコピー用紙が一枚、ぺろんと一枚出てきた。まるで化物のベロのように。そこには太字でこう書かれていた。〈タスケテ 2137ネンヨリ〉。
「なにこれ」
「……ドッキリ?」
コンピュータ室のおくのほうでは情報班のものたちがなにかやっている。このプリンターにアクセスできるのは文芸部だけ、のはず。
「な、わけないか」
わたしはそのあやしげな紙を慎重につまみ上げ、探偵のように目を細めた。ジャケットのポケットをさぐる。
「なに探してんの?」
「おおきな虫眼鏡」
「そんなの持ち歩いてたっけ?」
「いや」
なんだそれ。栞はわたしから用紙をうばいとり観察する。
「インクは新しい。文字バケなし。紙送りも正常。プリンターにしこまれたなんの変哲もないA4のコピー用紙ね。だけど、発信先は2137年。つまりこのプリンターは百年以上さきの未来とつながっている」
「ワームホール的な?」
ごごごっとうなり音がきこえ、もう一枚の用紙がアカンベェよろしく吐き出される。〈ぱそこん二 ムカヘ〉。
わたしたちは文芸部のパソコンにもどった。わたしが使っていたパソコンの画面に見慣れないウィンドウが開いている。【時空同期率 3%】。
「うわ」
「うわ、っていったね、今」
わたしは震える指でキーボードを叩く。
【あなたは誰ですか?】
数秒後、画面に返事が出た。
【2137年の太女の文芸部員です。花子といいます。コンピュータ室にいます。】
「未来でも部室なし!?」
「そこ継承されるんだ……」
さらに文面が続く。
【たすけてください!】
【どうしたの?】
【文化祭展示用AI小説生成機が暴走し、文化祭が迷宮化しました】
わたしの目がキラリと輝いた。とおもう。実際にはじぶんでみたわけじゃないけどね。(つづく)
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その55
7月。上半期も終わり、いよいよ下半期へ差しかかってきた夏の日。
私、折下ふみかは、炎天下一人自転車を漕いで学校へ向かっていた。ちなみに夏休みは始まっている。なのに、何故登校しているかというと。
夏季課外があるからである!!
もう慣れたが、1年生のときは「え!? そんなものがあるの!?」と驚愕していた記憶がある。今は慣れた。本当に。ただ、結構億劫であることには変わりない。前期だけじゃなくて後期もあるし。何がたのしくてエアコンの効いた愛しの我が家を離れて、日差しの厳しい外に出なければいけないのか。最近は外の気温も日に日に上がっていて、もはや熱中症は避けて通れないほどになっている。日傘と手持ち扇風機は手放せない。紫外線は肌の天敵だから日焼け止めとアームカバーもマスト。そんなこんなで、いろいろ準備して汗を滴らせながら学校に行くのだが、教室に入ると中はがらんどう。人が全然いない。一限目の開始時刻が迫っているというのにだ。気持ちは分かる。うんうん分かるよ。行きたくないよね、そりゃあね。強制でもないもんね。確か。じゃあ偉くない? 私偉くないか? うん。偉い。偉すぎる。ちゃんと後期も出席するつもりでいるし。偉いな、私。
などと自分を鼓舞していると、教室がやけに暑いことに気付く。そうだ。まだ扇風機もエアコンもつけていないじゃないか。やーれやれ、しょうがない。私がつけるとしますか。
幸いにも私の机の位置は教卓に近く、電源の集合地にも近い。私は手持ち扇風機を片手に、扇風機とエアコンの電源をオンにした。はずだった。
「はい?」
扇風機の電源はついたのにエアコンの電源がつかない。何度押しても「中央管理中」となっている。は? もう始まるんですけど? 授業。おかしい。いつもなら8時を過ぎたらつくはずなのに。このままでは蒸し蒸しの空気が充満した教室で授業を受けなければいけなくなる。それだけは嫌だ。ただでさえ外が暑いのに教室も暑いとか無理過ぎる。謎にエアコンがつかないのは私のクラスだけなのかと思い、隣のクラスの子に聞いてみたが、どうやら隣のクラスでもエアコンがつかず困っているようだった。自分のクラスだけエアコンがつかないなどということではなかったのはいいが、問題が解決したわけではない。授業開始のチャイムが鳴るのも、もうすぐだ。あ、終わった。今日はもうダメだ。セルフサウナ状態で授業だ。最悪だ。こうなっては腹を括るしかないか…と思い、私は自分の席で碇ゲンドウポーズでチャイムが鳴るのを待っていた。
課外の1時間目は8:40にはじまる。時計の長針は8:35を指そうとしていた。教室の座席もクラスメイトでほぼ埋まった。私が密かにあきらめの境地に辿りつこうと覚悟を決めているとき、教室に滑り込んできた同じクラスの子が最後の悪あがきと言わんばかり(私にはそう思えた!)にエアコンの操作パネルに近づき、電源スイッチに手を伸ばした。その子に対し、諦めるんだ。今日のエアコンはこちらの言うことを聞いてくれないんだから! と声には出さず思ったのもつかの間。
ピ! ピィ……(起動音)
先刻の抵抗はどこへやら、エアコンは素直に稼働し始めたのだ。瞬時にクラス中に歓喜の声が溢れる。それをよそ目に私は、
「えぇ…」
とため息が出たのであった。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その54
◆「せせらぎ」191号◆
部誌「せせらぎ」191号が完成しました。
ひとまずデジタル版をアップします。
アナログ版は7/21には完成する予定です。
今回も力作ぞろいです。
たくさんのひとに読んでもらえるとうれしいです。
読後の感想はお近くの文芸部員にお寄せください。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その53
◆一つ目の終幕◆
みなさん、こんにちは、こんばんは、それとも、おはようございます? 折下ふみかでございます。今回の「折下ふみかの華麗なる冒険」はちょっとメタい話になります。…
今回の折下文香の〝中の人〟である私が文章を書く回は、今回が最後となります。思えば、ふみかちゃんの冒険の第一回は2024年07月09日、松籟祭(文化祭)についてのお話でした。書いた人は、当時の3年生の先輩だったかな。ふみかちゃん爆誕も、6月のことでしたね。ぬるっと名前が決まったので、実は私も(たぶん当時の文芸部の誰も、もしかしたら顧問の先生も)正確な誕生日を知らないんですよね…。それからおよそ2年間、尊敬してやまない先輩が卒業したり、かわいいかわいい後輩が入ってきてにぎやかになったり、いろいろありながらもみんなで「折下ふみかの華麗なる冒険」を続けてきました。きっと、これからも後輩のみんながいろんな冒険を記していってくれることでしょう。さみしいけど、しょうがないというか。
それはそれとして、私には切実な望みがあります。ふみかちゃんの創作をこれからも続けたい! そして発表する場がほしい!! 前回、「せせらぎ」190号で私は「『折下ふみか』特集」を開催し、みんなでふみかちゃんの物語を書きました。しかし、まだまだネタは尽きない…。けど私には、もう発表する場はない…。
と、いうわけで! 卒業してもふみかちゃんの二次創作(表現あってるのか?)を書き続けられる、発表できるサイトとか作れませんかね!? 「折下文香の拾遺集」とかさぁ…いいと思うんだけど…。卒業しちゃったら「折下ふみか」ちゃんの名前を使うのっていろいろダメだと思うんだよな…。でもふみかちゃんのつもりで書いた話を、ふみかちゃん以外の名前に変えて発表するのも納得できなくて…。どうしようかなぁ。
そういえば、ぜんぜん話が変わっちゃうんですが、一つ心残りがあったんですよ。どうせだし、ここで言っちゃおうかな。2025年06月12日投稿の「文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その20」で、せせらぎ188号の合評会のレポートが載っているんですが、その中の私の作品「記憶のカケラ」で、Gちゃんが「ひとはだれでも死ぬけれど、その宿命を悲観するのではなく、死ぬまでを前向きに生きることで「私」は娘の記憶の中に断片的でもかまわないから生き続けようとつとめる。」って言ってるけど、実はこれ、間違ってるんです。「私」は祖母(「私」にとっての母)を知らない自分の娘に、ブランデーケーキの話をして、その後ねだられるままに自分の母親の話を聞かせることで、会ったことがなくとも、自分の祖母はこういう人だったんだな、って知っておいてもらいたかったし、憶えておいてもらいたかったんです。たぶんこれは、私が、会ったことのないひいおじいちゃんやひいおばあちゃんの話を聞きたがることがある、というところから来ているんでしょう。
この間違いに気づいたとき、直してもらおうかと思ったんですが、投稿されてからやや経っていたし、何と言って直してもらえばいいかもわからなくて、結局言えなかったんですよね。この話がなんだかわからないって人は、「せせらぎ 188号」または「文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その14」、「文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その20」を読んでね。(宣伝)
最後の最後にこんなんでいいのかってちょっと思いましたが、まぁいいでしょう! これからも、「文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険」をよろしくお願いします。そして、後輩ちゃんたち!(まだ見ぬ後輩ちゃんも含めて)ずっとずっと、ふみかちゃんと一緒に、文芸部を盛り上げていってね! 今回の「せせらぎ」に私が出す予定の、ふみかちゃんの死ネタみたいな最期が来ないことを祈ってるよ!!(←何書いてんねん)
それではみなさん、そろそろお別れの時間でしょう。(書きたいことは書きました!!)折下ふみかよ、永遠なれ! …以上、今回の〝中の人〟ラギでした。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その52
6月である。
私、折下ふみかには、とても深刻な悩みがある。それは、本日の太田女子高の生徒にとって共通の悩みだと思う。
「〇〇高校、休校になったって!」
「うわあ、いいなぁ」
「なんで太女は休校にならないのかなぁ」
そう、その悩みとは、台風の接近にもかかわらず休校にならなさそうなことである。
この時期には珍しい台風の接近。私にとって、その意味はたった一つ。
……学校が休みになるかもしれない!
いや、「かもしれない」ではない。きっとなるはずだ。うん、そう信じよう。
台風の影響による被害が大きいのは良くない。でも、あまりに弱い雨だと休校にはならないだろう。だから、台風には休校になるギリギリを攻めてもらいたい。
帰りのホームルームで、先生が言った。
「明日は台風接近の危険があるので、早朝課外がなくなりました。」
「わぁぁぁ! やったー!」
盛り上がる教室の隅で、私は一人思っていた。
……私、課外とってないから、関係ない!
そうだ! 明日の天気を調べよう!
ホームルーム後にスマホを取り出して天気を調べるも、出てくるのは無情にも曇りマークだ。無表情でリロードするも、当たり前だが結果は変わらない。
心の中でため息をつき、スマホをしまう。
まあ、明日になったら、きっと土砂降りで強い風が吹いているはずだ!
その「明日」になった。
起きて早々窓から外の様子を見るが、なんか、思っていたのと違う。
……なんでこんなに弱い雨なの?
いや、もちろん、台風の影響が小さいことは、良いことだ。台風の被害が小さいほうがいいに決まっている。私の母も、雨の日は「洗濯物が乾かない」と怒っているし。
でも、でも……。期待していた。期待していたからこそ、この結果はなんとも悲しい。私の日ごろの行いが悪いから、期待した結果にならなかったのかな。 ……自覚がある。むしろ、自覚しかない。そもそも休校になるように願っている時点で行いが悪い。
……いや、希望を捨てちゃダメ! まだ休校の可能性はあるよね。
スマホを片手に朝ご飯を食べる。もちろん、スマホを見ながらご飯を食べるような、良くない行為をするためではない。学校からの休校の連絡を待つためである。
……こないなぁ。
ご飯を食べ終わる。
………こないなぁ。
学校に行く準備が終わる。
…………こないなぁ。
しょうがない、学校に行こう。
雨のせいか、風のせいか、はたまた気持ちのせいか、一歩が重い。
「おはよ!」
「わっ!」
急に話しかけられ、びっくりする。
「そんなに驚かないでよ。」
「あっ、なんだ、栞ちゃんかー。」
この、「なんだとは何よ」とプリプリ怒っている女の子は私の友達の栞ちゃんだ。
「休校にならなかったね。」
「期待していたのになぁ。」
「しかも△△高校も休校らしいよ。」
「うわあ、いいなー。」
栞ちゃんと仲良く学校に行く。どんよりしていた気持ちはいつしかなくなっていた。
なんだかんだ言って、こういう会話が楽しいのだ。休校になるよりも、学校に行って友達と他愛もない会話をするほうが楽しいと思う。
気づいたころには、もう雨は降っていなかった。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その51
5月9日土曜日。太田女子高校の文芸部員と新聞部さん、太田高校の文芸部員さんが集まり、金山登山に挑みました。金山登山というビッグイベントは去年も企画されていましたが、その時は天候に恵まれず、大光院にて句を考え、太田女子高校の小会議室で句会を開くという形になっていたのです。つまり、新入生だけでなく、2、3年生にとっても初めての金山登山となりました。そういうこともあり、波乱万丈となった金山登山の様子を、これからお話していきたいと思います!
登山し始めてすぐのころ、私たちはそれはもうルンルン気分で山を歩いていました。どれくらいかというと、童謡を斉唱してしまうくらいに。余裕だなぁと思っていたのです。なぜなら超なだらかな山道だったから…あなた体力無いんだから大人しく黙って登りなさい!!…なんて、あの時の私に言ってやりたいです。
山頂まであと半分、いや3分の1くらいだったでしょうか。段々と、段々と…! 階段がきつくなってきました。ひぃひぃ言っている人もいれば、まだまだ余裕そうな人もいる、そんな感じでした(私はもちろん前者)。道中ではとにかく様々なことが起こりました。途中で蛇に会っちゃったり、熊出没注意の看板でちょっぴり吃驚したり、水芭蕉の花のクイズを出してもらったり…。
山頂に辿り着いた時の感動は忘れません。とにかく空の青が綺麗に見えました。それから、ふもとにある太田女子高校や太田高校の校舎が凄く小さく見えて、こんなに高いところまで来たのか、という実感が湧きました。日差しは相変わらず強かったので、皆で屋根の下に避難して、絶景を見ながらお昼ご飯を食べました。お菓子交換会なども行われ、にぎやかな休憩時間となりました。
お昼ご飯の後は句会です。皆さん、ここまで登ってきた道のりや、今見えている景色をもとに、素敵な俳句を作っていました。
【太女1年生の作品】
風薫る山頂目指す青い空 山頂で富士霧隠れ初夏の日に
山の中春風強すぎ前見えない
爽やかに木々生い茂る青々と
風吹けば青葉揺れるや山の頂
金山の囀りを聞き春を知る
夏風邪がゆらゆらと吹く金山よ
城趾で若葉の風に行き弾む
【太女2、3年生の作品】
春の山風と闘う土踏まず
風光る木漏れ日のなか歩みゆく
五月晴輪唱響く山の中
揺れ動きさらさらと舞う新緑や
紋白蝶お前も独りであるか
せせらぐは揺らぐ春山小川のように
春の風友と並んで山を行く
空広く風吹き抜ける山若葉
春疾風乱れ心を飛ばさばや
【太田高校生の作品】
快晴の水面に宿る水芭蕉
若葉揺れ風を感じて目を細め
雄々と歴史を語る岩肌よ
金山に風光り咲く夢の跡
行く春に姿変わらずいしかたく
燦々と木漏れ日の雨が降る
ざわざわと震える木々よ気高くて
みなさん(とくに新聞部、太田高校文芸部のひとたち)、素敵な俳句をありがとうございました! 解説や感想を言い合う時間は、更なる作品づくりへのインスピレーションになりました。
下山中も沢山の試練がありました。落ち葉が落ちているところは滑りやすく、私も何度か転びかけました。じゃあ落ち葉じゃないところを…と避けてみても、今度は砂利で足を持っていかれそうになったり。妙に険しいな、と思ったら道を間違えてしまっていたり! (「ごめんさない」顧問の独白)そんな中でも、私たちは協力し、声をかけ合い、手を取り合って何とか無事に下山することができました。山道から抜けた私の第一声は「平らだ……」で、暫く平らな道の良さを噛み締めていました。
運動が大の苦手な私ですが、終わってみると達成感と楽しかった思い出がこみ上げてきて、こういうのも案外悪くないなぁと思えました。皆さんも、勉強やお仕事に疲れた時は、思い切って山登りに行ってみてはいかがでしょうか。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その50
桜について少し思ったことがあるので、書いてみたいと思う。
多くの人は、桜は満開のときが一番いい、と感じていると思う。私もこの前まではそうだった。でも、今年の春に気づいたのは、満開から1、2週間くらい経った花が半分くらい散ってしまった頃の桜も、とても素晴らしいということだ。葉っぱと花、半々くらいがちょうどいいバランスだ。空の青、葉の若緑、桜のピンク。枝の黒でアクセント。満開のとき、木が花で埋め尽くされていると、全体としては華やかで美しいのだけれども、その花ひとつ、ひとつに注視する機会が減ってしまうように思う。全体がぼやっとピンクな感じ。でも、葉っぱがあると、各々の花が緑のなかに際立って、ひとつ、ひとつが大切に思えるようになるのだ。このとき、じっと花を見てみる。桜の花は散ってしまうからと儚いものに思われがちだ。けど、このころに見てみると、周りが新参者の若葉ばかりだから、お花がなんだかベテランに思われて、儚いというよりもむしろ、「ずっとここに居ました、これからもいます」という風な顔をしているように思えるのだ。ふと地面をみる。そんな顔とは反対に、落ちていった仲間が地面で絨毯をつくっている。やはり、永遠ではないことはわかっているのか。仲間に対して、新入りに対して、どんな気持ちなのだろう。有限がわかっていたら、最後に残る花は、きっと、新参者の葉っぱたちになにか、この木の歴史でも語っている。もしかしたら、冬の寒さは辛すぎた、とかと愚痴っているのかも。花たちは、私たちの目を、心を癒してくれた。新入りの葉っぱたちはきっと、夏ごろにはこの木にの主体となって、私たちを強い日差しから守ってくれるだろう。
そんなことを思った今年の春でした。
そして、な、な、なんとついに、「文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険」が連載50回を達成しました!(ぱちぱちぱち)ふりかえればこのブログが産声をあげたのは2024年7月のことです。文芸少女の文芸少女たる矜持をもって、日日是文芸少女である私折下が文芸少女のありったけをこめて作品を書き綴ってまいりました。ちりも積もれば山となる、連載開始から2年の歳月を経て、50回という節目を迎えられたのは、ひとえに「読者」のみなさまのご愛顧の賜物と心得ております。これからも文芸に精進し、現状に満足せず、一作ごとに文芸少女として成長してゆけるように励んでまいりますっ! 乞うご期待!!
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その49
気がつけば、新学期を迎えてからもう一か月が経つ。天を仰げば、色とりどりの大きなこいのぼりが列をなして青空を悠々と泳いでいて、手を広げれば、ほんの少しの湿気を帯びた風が私の体をやさしく撫でてゆく。五月最初の休日は、まだ浮足経ってしまうような陽気に包まれていた。
もうゴールデンウィークがはじまっているというのに、この六日間の予定は何ひとつもたっていない。少し気が早いが、今後外出する予定のない私はスーパーで一パック四つ入りの柏餅を買って家に向かった。誰かとシェアをする前提で作られた賞味期限の短い、甘ったるくて不意に食べたくなる代物。たくさん出された課題を消化しなければならないのに、右手には白くて甘い誘惑。最終日に泣きそうになりながら課題を必死こいて片付ける姿が容易に想像できてしまい、家族が帰ってくるまでは、と思いそれを冷蔵庫の一番上の段にしまい込んだ。
なかなか集中力は続かず、去年の修学旅行で購入したシャーペンをくるくると無意味に回し、ノートの隅をトントンとノックした。ややあって、しびれを切らした私は模範解答を真っ白な解答用紙に赤色で書き連ねた。つぶれた赤い文字を解答用紙いっぱいに書き連ねた。ふぅ、とため息を吐いたのと同時にスマホの通知音が一人きりの部屋に鳴り響いた。「もうすぐ家に着くよ」
そのメッセージを見た途端、忘れかけていた存在が頭に浮かんできた。大きく伸びをした後に、しびれた足をたたきながら冷蔵庫へつま先を向けた。独特な冷蔵庫のにおいを吸って、一番上の段の棚に手を伸ばした。少し冷えたパックが熱くなった体をだんだんと冷まして、足先から脳天まですっきりしていく感覚。大事に抱え、ダイニングテーブルに置き、パックを開ける。柏の香りが鼻の奥にスッと抜けていく感覚が心地よくて勉強でこわばったからだがゆっくりとほどけてゆく。もちもちとした触感と程よいあんこの甘さがクセになり、一口また一口と手が止まらなくなる。あっという間に手の中からなくなった柏餅を思うとなんだか口がさみしくなり、もう一つ柏餅を手に取り食べ始めた。母と父の分を残しておけばきっと大丈夫、そんなことを思い食べ進めた。網戸を通り抜けて優しく私を包む風のせいか、残りの二つを気づいたら食べ終えていた。
満足し、ややあって車のエンジンの音が家に響き、手元にあった空になったパックをばれないようにごみ箱の奥に捨てた。