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文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険その9

総文祭の報告です♡

令和6年10月26日土曜日のお昼過ぎ、わたしたちは「関東と信越つなぐ」高崎市にいました。「第30回群馬県高等学校総合文化祭文芸部門交流」に会参するためです。「金山」と「呑竜様」の街太田発11:16の「銘仙織り出す」伊勢崎行きにのり、伊勢崎でJR両毛線にのりかえて、1時間とちょっと、高崎は薄曇りでした。会場となっている群馬音楽センターまでは徒歩15分くらい。総文祭に参加するらしい高校生がたくさん歩いていました。開場前にお庭のベンチで優雅にランチと洒落こみたかったのですが、「はやく食べて準備を手伝って」と顧問のY先生にせかされてのんびりしていられませんでした。わたしたちは幹事校となっている太田高校文芸部をサポートすることになっていたのです。太田の生徒はすでに到着し、会場の設営をしていました。大慌てでご飯を食べ終えたわたしたちは、交流会でつかう「名札」を三角におってセロテープでとめる作業を任されました。交流会ではグループごとの司会と進行も仰せつかっています。どきどきの「晴れ舞台」です。

まずは「2024年度第19回 群馬県高校生文学賞」の表彰式です。散文部門、詩部門、短歌部門、俳句部門、同人誌部門で、のべ30人5校が表彰されました。そのなかに、われらが長山穂乃花さんが含まれています。誇らしいかぎりです! 長山さんが受賞の喜びをしたためてくれました。

 満腹からくる眠気に負けそうな穏やかな昼下がり。そんな眠気をかき消すほどの緊張が、私に背筋を伸ばさせる。
 今日は総文祭の表彰式だ。生まれて初めて、私の作品が誰かに評価された証をもらえるのだ。そう考えると緊張を上回るワクワクとドキドキが混ざった喜びが胸のあたりを暖かくする。
 静かな会場の外から賑やかな演奏とたくさんの人のざわめきがぼんやり伝わってくる。表彰は部門別に行われるらしい。右隣の列の人たちが名前を呼ばれて前へ出ていった。私が応募したのは散文部門。呼ばれるのはこの次だ。
 前に出た生徒たちは、ひとりひとり名前を呼ばれて賞状を手渡されている。すべての人に賞状が渡ると、みんな席に戻ってくる。
 散文部門の私達も呼ばれる。前も後ろも知らない、他校の生徒だ。せめて同じ学校の仲間たちに挟まれていたのなら、この緊張もいくらかマシだったろうに。
 席を立つ。
 少しだけ震える指先を抑えて前へ向かう。
 私の名前が呼ばれた。
 大きな賞状が渡される。たしかに私の名前が書いてある。私だけの賞状。
 ソワソワする気持ちをそっと身体の奥に閉じ込めながら元いた席に戻る。すると、前の席に座っていた女子生徒は椅子の下に置いてあった自分の荷物を手に取ると、ふたつ隣の列の席へと移動した。散文部門だけでなく短歌部門でも表彰されるらしい。
 前へ出ていった左隣の人たちも賞状を手に戻ってきた。斜め前の子も荷物を持って俳句部門へ並んでいった。
 この場にいるうちのかなりの人数が複数の部門で賞を取っている。
 様々な形式の文字に触れたほうが良いのかな。もっといろんな文章を書いてみよう。
 新しい目標を見つけた、そんな暖かい秋の午後だった。

すばらしいことですね。わたしたちもおおいに励みになりました。

第二部は交流会です。文学賞で短歌部門の選者をしてくださった、歌人の石原秀樹先生をお招きして、「歌会(かかい、と言うそうです)」を開きました。参加者を五つのグループに分け、あらかじめ投稿してあったそれぞれに短歌から自分が気に入ったものを選び、感想を述べあう催しです。わたしたち太女文芸部はふたつのグループの司会進行を任されました。まずは短歌の書かれたプリントを配ります。時間をとって◎と〇をそれぞれ三つつけてもらいます。用紙を回収し、わたしたちが集計した結果にもとづいて、上位の短歌から、それをよいと思った人の感想を聞き、最後に作者の創作意図などを話してもらいました。とてつもなく緊張しましたが、「歌会」はとてもなごやかに楽しく展開し、充実した時間となりました。なにしろ、短歌についてひとの意見をきく、はなすという体験が新鮮でした。ひとつのおなじことばのつらなりなのに、ひとの感想はさまざまで、作者の描きたかったこととかならずしも一致するわけではありません。でもそれが「文芸」のありかたなんですよねぇ。

  

さいごに石原先生からいくつかの短歌をとりあげてもらい、講評をいただきました。じょうずな短歌をつくるためには、どんなささいなことでも五七五七七にしてみること。先生はその日コンビニにたちよったときのできごとをさらさらっと短歌にしていました。そういうことの積み重ねがことばの鍛錬になるというお話でした。なるほどなるほど。まずはやってみる、ということですね。

五つのグループのなかで得票数が一番おおかった短歌の作者が表彰されました。そのなかに太女文芸部の生徒も含まれていたんですよ! これまたすばらしい。名誉なことです。長山さんが書いているように、小説だけではなく、短歌に俳句に、わたしたち太女文芸部は、ますます精進しまーす。

わたしたちが投稿した短歌はつぎのとおりです。ひとり二首つくりました。できばえはいかがでしょうか?

 涼風を切って舞い交う赤蜻蛉秋の家路の束の間の夢
 記憶から声も姿も薄れゆく心を録画するカメラどこ
 四年前灰に濁った暗がりで崩れる白をただただ見つめ
 過ぎ去ればおぼろと消えてゆく君の記憶の端を留める夢を
 つぶやいた手加減無用合図してテスト開始の鐘が鳴り出す
 見開いたページの中のメッセージ古い本には誰かの記憶
 駅で待つ毎度秋は遅延だが定刻通り咲く彼岸花
 まげわっぱ蓋を開けると栗ご飯今年も来ました食欲の秋