2026年9月の記事一覧
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その61
「折下先輩、これはどこに置けばいいのですか?」
ふみかが後ろを振りかえると、図書委員の後輩である小栗安奈が十冊くらいの本を抱えて立っていた。
「それらの本はここからまっすぐに行って、右の角にある本棚に置いてちょうだい」
「わかりました。ありがとうございます」
安奈はそういうと、すばやく本棚の蔭に消えた。折下ふみかと小栗安奈は図書館の蔵書整理を手伝っていた。ふみかのもとに戻り、別な書棚から書籍を取り出す作業を手伝いながら安奈がつぶやく。
「折下先輩、そういえば最近は図書館に来る人が少ないですね」
「文化祭も近いし、みんなは精一杯準備をしているから仕方ないよ」
ふみかはテーブルのうえに山積みにされた本のバーコードをバーコードリーダーで一冊ずつ読みこんで、本の山を崩しては積みあげてゆく。安奈はバーコードのチェックがすんだ書物を書棚にもどす作業をつづける。
「そういえば、杏奈ちゃん、あなたたちのクラス企画は順調に話がすすんでるの?」
杏奈は本の山から目を離し、ふみかを見る。
「まだ何にするのかを話し合っている途中で、具体的に何をするかは」
せっせとバーコードを読み取っていた手をとめてふみかは、不思議そうに安奈をみあげる。
「あれ? 太田焼そばの歴史を調べて、究極の太田焼きそばを作るっていう企画じゃなかったっけ?」
「ええ、最初はそうだったんですけど、『太田焼そば』のコンセプトのことで喧嘩になっちゃいまして」
杏奈は頭に手を置きながら苦笑いした。
「みんなは、太麺か細麺か、ソースは辛いのか甘いのか、そもそも究極というからには麺やソースを手作りにしないと意味ないんじゃないかとか、喧喧囂囂、侃侃諤諤、どうにもこうにもまとまりそうもなくなちゃって。とりあえず、また次のロングホームルームでもう一回話し合うことになってます」
「そうなんだ」
ふみかは頷く。
「杏奈ちゃんはやはりすごいよね。そんなカオスめいた状況でもあきらめずにクラスのみんなが議論し合えるように調整しようとするなんてさ」
「いえいえ、そんなことありません」
ふみかの言葉で、杏奈は慌てて頭を横に振る。
「私は、まだリーダーとしては不甲斐ないです」
そんなことないよ。だって、杏奈ちゃんが何度も先生から褒められるところを見たから。ふみかはそれらの言葉をのどもとでおしとどめ、そのまま黙り込んだ。
「私のクラスの出し物も実はまだ決まっていないんだ」
杏奈は彼女の言葉で驚いたように聞き返す。
「折下先輩のクラスが、ですか?」
「そうだよ」
正確には、ふみか自身もよく状況がわからなかった。最近では部活の原稿の提出に追われて、文化祭に関わる話し合いのことを頭から締め出していたのだ。ううむ。これじゃいかんな。クラスのメンバー失格だ。杏奈のような責任を持っている、まじめな頑張り屋さんになれたらな。ふみかはそっと心の中でつぶやいた。
文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その60
皆様いかがお過ごしでしょうか。折下ふみかです。遂に、というか何というか、学生にとってのビックイベントである夏休みが終わりを迎えてしまいましたね。充実した夏休みは過ごせましたか? 私は思い通りに、というわけにはいかなかったものの、楽しい夏休みを過ごせたように思います。どうせなので、私が夏休みにしたことでも話してしまおうかと思います。
ここで、「とにかく勉強を沢山しました」などと言ってしまうと何だか少し面白みに欠けそうなので、楽しかったことでもお話ししたいと思います。出来事といえば二つほど。一つはオープンキャンパス、もう一つは夏祭りです。
前者、オープンキャンパスと聞いて、結局勉強の話じゃないかとお手持ちの端末を床に叩きつけそうになったそこの貴方! 落ち着いてください。私としましても、オープンキャンパスというものはそこまで気の進むものではありません…。自分の進路を決める上で必要なことなんだから文句言うなと言われたら黙りこくるしかないのですが、私は本当に人混みが苦手でして。人混み自体もちょっぴり辛いのですが、そこで迷ったり困ってしまったりするとさぁ大変。人酔いで気持ち悪くなったり、頭が痛くなってしまうことも……。そんな中迎えた当日、私の体は案外楽でした。その理由はというと、今回行った大学は対応や案内が今まで行ってきた中でダントツと言っていいほど丁寧で、困りごとが本当に無かったのです。適度な間隔で案内の看板が置いてあったり、先生や在校生の方々が回ってくれていたり、なんと大学付近の飲食店などが困らぬように、飲食店利用目的以外での駐車を取り締まっていたり……。食堂の方も良い人で、軽い雑談を混ぜながら笑顔で対応をしてくださりました。とにかく私はその時、人混みよりもその神対応に圧倒され、体調を崩さずに入試説明などを聞くことができました。
さて、そろそろ後者に話題を移しましょう。なんと今年は、夏祭りに行ったのです!……去年は? と思いましたね? 別に、去年の私がぼっちだったというわけではなく、やむを得ない事情があったのです。そう、海外研修。私は去年、運良く海外研修へ行くことができたのです。外国での経験は、私の英語力を大きく伸ばしました。特にリスニングはしやすくなったように思います。そんな後悔の無い海外研修で、唯一私が悲しく思ったのは、中学時代の友人と行く予定であった夏祭りの日にちと、海外研修で国を離れている期間がだだ被りしていた、ということです。あの時の悲しみと申し訳なさといったら…忘れることはできません。だからこそ、今年リベンジを果たせたことがたまらなく嬉しかったのです。地元の夏祭りでは、沢山の屋台でお腹を満たしつつ、豪華な花火を見ることができます。それはそれは豪華なもので、友人達と私は口をそろえて「これもっと有名になった方がいいよ。もっといけるよ。」と興奮気味に語ったりもしていました。そうそう、地元ということもあり、中学卒業後会えていなかった友人との再会も多く、それも楽しく思いました。変わっていない友人もいれば、ガラッと変わった友人もいますし、彼女らしき人を連れている友人まで。昔の思い出に浸りつつ、その記憶を今にアップデートできるというのは、何ともまあ心が躍るものです。
皆さんも良い夏休みが過ごせたことを願っています。もう悔いはありませんね? さあ、休み明けの新学期も全力で走り切っていきましょう。