文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その61

「折下先輩、これはどこに置けばいいのですか?」
ふみかが後ろを振りかえると、図書委員の後輩である小栗安奈が十冊くらいの本を抱えて立っていた。
「それらの本はここからまっすぐに行って、右の角にある本棚に置いてちょうだい」
「わかりました。ありがとうございます」
安奈はそういと、すばやく本棚の蔭に消えた。折下ふみかと小栗安奈は図書館の蔵書整理を手伝っていた。ふみかのもとに戻り、別な書棚から書籍を取り出す作業を手伝いながら安奈がつぶやく。
「折下先輩、そういえば最近は図書館に来る人が少ないですね」
「文化祭も近いし、みんなは精一杯準備をしているから仕方ないよ」
ふみかはテーブルのうえに山積みにされた本のバーコードをバーコードリーダーで一冊ずつ読みこんで、本の山を崩しては積みあげてゆく。安奈はバーコードのチェックがすんだ書物を書棚にもどす作業をつづける。
「そういえば、杏奈ちゃん、あなたたちのクラス企画は順調に話がすすんでるの?」
杏奈は本の山から目を離し、ふみかを見る。
「まだ何にするのかを話し合っている途中で、具体的に何をするかは」
せっせとバーコードを読み取っていた手をとめてふみかは、不思議そうに安奈をみあげる。
「あれ? 太田焼そばの歴史を調べて、究極の太田焼きそばを作るっていう企画じゃなかったっけ?」
「ええ、最初はそうだったんですけど、『太田焼そば』のコンセプトのことで喧嘩になっちゃいまして」
杏奈は頭に手を置きながら苦笑いした。
「みんなは、太麺か細麺か、ソースは辛いのか甘いのか、そもそも究極というからには麺やソースを手作りにしないと意味ないんじゃないかとか、喧喧囂囂、侃侃諤諤、どうにもこうにもまとまりそうもなくなちゃって。とりあえず、また次のロングホームルームでもう一回話し合うことになってます」
「そうなんだ」
ふみかは頷く。
「杏奈ちゃんはやはりすごいよね。そんなカオスめいた状況でもあきらめずにクラスのみんなが議論し合えるように調整しようとするなんてさ」
「いえいえ、そんなことありません」
ふみかの言葉で、杏奈は慌てて頭を横に振る。
「私は、まだリーダーとしては不甲斐ないです」
そんなことないよ。だって、杏奈ちゃんが何度も先生から褒められるところを見たから。ふみかはそれらの言葉をのどもとでおしとどめ、そのまま黙り込んだ。
「私のクラスの出し物も実はまだ決まっていないんだ」
杏奈は彼女の言葉で驚いたように聞き返す。
「折下先輩のクラスが、ですか?」
「そうだよ」
正確には、ふみか自身もよく状況がわからなかった。最近では部活の原稿の提出に追われて、文化祭に関わる話し合いのことを頭から締め出していたのだ。ううむ。これじゃいかんな。クラスのメンバー失格だ。杏奈のような責任を持っている、まじめな頑張り屋さんになれたらな。ふみかはそっと心の中でつぶやいた。