2024年9月の記事一覧

文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険その4

 突然だが、あなたは『オペラ座の怪人』をご存じだろうか。ガストン・ルルーの怪奇小説をアンドリュー・ロイド・ウェバーという作曲家がミュージカルにしたもので(他にもたくさんの映画や舞台もあるが、最も有名な作品はウェバーの手によるものだ。また、『深愛なるFへ』という翻案漫画もあるので、ぜひ読んでいただきたい。この漫画は原作での悲恋を大団円に変えているそうだが、まだ連載中なのでドキドキしながら追いかけているところだ)、そのウェバー版をさらに映画化した作品も六月から全国各地の映画館で上映されている。残念ながら、夏休み前に県内では終了してしまったが。

 そして、私はこの夏、とうとう劇団四季が上演しているウェバー版を観ることができたのだ。この横浜公演は八月十一日に千秋楽を迎え、次は来年の秋に福岡で開幕することが決まっている。横浜の前は大阪で、と、日本中を回っているのだ。音楽の授業でロンドン公演のDVDを観てすっかり虜になってしまい、いつかは生で観たいと思っていたら、幸いなことに半年ほどでその機会に恵まれた。「劇団四季のオペラ座の怪人は凄いらしい。」と銘打ったポスターには作品の象徴たる仮面とシャンデリアの絵が存在感たっぷりに描かれ、劇場の外には仮面と真紅の薔薇が描かれた壁面塗装が施されていた。

 さて、初めて生のミュージカルに触れたわけだが……劇団四季は謙遜しすぎていやしないか。「凄いらしい。」ではなく、「凄いんだ!!」くらい言っても良さそうなものだ。舞台であるということを忘れ、怪人も、歌姫クリスティーヌも、ラウル子爵も、すべて本物だと錯覚してしまった。目の前で起こっているのは本当の「オペラ座の怪人事件」で、ルルーはこれを見てあの小説を生んだのではないかと思いかけたほどだ。

 休憩を挟んだ三時間弱はあっという間にも永遠にも感じられ、時折呼吸すらも忘れかけて見入ってしまった。後から知ったのだが、カーテンコールも普段より長かったそうで、そんな良い日に行けたことがとても嬉しかった。終幕直前のシーンでぼろぼろになっていた主役の三人が元気いっぱいに登場し、何度も笑顔を見せてくれて、その様子に再び涙する人も。

 最後に、謙虚なポスターに代わって言おう。「劇団四季のオペラ座の怪人は凄いんだ!!」