文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その29

私、折下ふみかは、オーストラリアでかなり勇敢だった。これはきちんと友達の保証付きである。
普段の私はというと、そこまで人と話すタイプではなく、どちらかというと対人関係においては消極的な人間である。そんな私のオーストラリアでの武勇伝(?)をお話しようと思う。

武勇伝① 

私はホストファミリーたちが忙しそうにしていたとき、特にすることもなかったので、ペアの友達と近所を散歩に出かけた。15分くらい歩いた先に、ドックランを見つけた。そこでは、5、6人の人たちが自分たちの犬を連れておしゃべりをしていた。普段の私だったらそのままスルーしてその場を通り過ぎるのだが、そのときの私はオーストラリア・モードだった。「私は人とコミュニケーションするためにオーストラリアに来たのだ」というスウィッチがはいり、勇気を振り絞って柵の10メートルぐらい先にいる人たちに向かってとても大きな声で言ったのだ(私としてはそれはそれは大きな叫びだった)。
「Can we enter here , please?」
「Sure.」
彼らはとても朗らかに答えてくれた。私はとてもほっとしたのを覚えている。誘われるまままにドッグランに入ると、大人たちの中にひとり金髪の可愛い女の子が裸足で犬と遊んでいた。私たちも彼女と一緒に犬と少し遊ばせてもらった。その時、私は再び勇気を振り絞って、その女の子に話しかけた。
「Hello. How are you?」
それをきっかけに、彼女とは会話がはずみ、その子が12歳だとわかった。「え、この子私より年下なの?」内心結構びっくりした。確かに犬と戯れている姿はわんぱくではあるが、大人っぽい顔立ちであったので、私と同じかそれより上くらいであると思っていたのだ。
帰り際そこにいた人たちに
「See you later.」
と言われたが、私はその日の翌日には帰国することになっていた。もう、この人たちとは会えないかもしれないと思うと、少し悲しかったが、楽しい時間が過ごせて良かったと思った。

武勇伝② 

私はそのとき、ホスト・シスターのテニスの練習を見に来ていた。ファザーとマザーは私たちをくるまから下して、別の用をしていたので、私はペアの子とふたりでテニスの練習を見ていた。少しして、新聞を持ったおじいさんが少し離れた椅子に座った。シスターの練習はまだ長そうだったので、またもや私は日本では出せない勇気を奮い起してその人に話しかけることにした。
「How are you?」
おじいさんに言った。話していくと、おじいさんは孫の練習を見に来ていたらしい。おじいさんはアメリカの出身で、50年前にオーストラリアに来て、そのままずっとオーストラリアにいるそうだ。私たちが日本から来ました、というと「孫の学校のクラスにも日本人がふたりもいるよ。それに、孫は今日本語を学校で少し学んでいるんだ」と教えてくれた。ここオーストラリアのケアンズでは日本人の観光客を多く見かけるが、住んでいる人も多いのだなと思った。加えて、日本語が日本以外で使われているのがなんだか嬉しく感じた。

どうですか。なかなかやるでしょ、私。勇気をもったひと言が一期一会をもたらす、というお話でした。