文芸少女折下ふみかの華麗なる冒険 その55

7月。上半期も終わり、いよいよ下半期へ差しかかってきた夏の日。
私、折下ふみかは、炎天下一人自転車を漕いで学校へ向かっていた。ちなみに夏休みは始まっている。なのに、何故登校しているかというと。
夏季課外があるからである!!
もう慣れたが、1年生のときは「え!? そんなものがあるの!?」と驚愕していた記憶がある。今は慣れた。本当に。ただ、結構億劫であることには変わりない。前期だけじゃなくて後期もあるし。何がたのしくてエアコンの効いた愛しの我が家を離れて、日差しの厳しい外に出なければいけないのか。最近は外の気温も日に日に上がっていて、もはや熱中症は避けて通れないほどになっている。日傘と手持ち扇風機は手放せない。紫外線は肌の天敵だから日焼け止めとアームカバーもマスト。そんなこんなで、いろいろ準備して汗を滴らせながら学校に行くのだが、教室に入ると中はがらんどう。人が全然いない。一限目の開始時刻が迫っているというのにだ。気持ちは分かる。うんうん分かるよ。行きたくないよね、そりゃあね。強制でもないもんね。確か。じゃあ偉くない? 私偉くないか? うん。偉い。偉すぎる。ちゃんと後期も出席するつもりでいるし。偉いな、私。
などと自分を鼓舞していると、教室がやけに暑いことに気付く。そうだ。まだ扇風機もエアコンもつけていないじゃないか。やーれやれ、しょうがない。私がつけるとしますか。
幸いにも私の机の位置は教卓に近く、電源の集合地にも近い。私は手持ち扇風機を片手に、扇風機とエアコンの電源をオンにした。はずだった。
「はい?」
扇風機の電源はついたのにエアコンの電源がつかない。何度押しても「中央管理中」となっている。は? もう始まるんですけど? 授業。おかしい。いつもなら8時を過ぎたらつくはずなのに。このままでは蒸し蒸しの空気が充満した教室で授業を受けなければいけなくなる。それだけは嫌だ。ただでさえ外が暑いのに教室も暑いとか無理過ぎる。謎にエアコンがつかないのは私のクラスだけなのかと思い、隣のクラスの子に聞いてみたが、どうやら隣のクラスでもエアコンがつかず困っているようだった。自分のクラスだけエアコンがつかないなどということではなかったのはいいが、問題が解決したわけではない。授業開始のチャイムが鳴るのも、もうすぐだ。あ、終わった。今日はもうダメだ。セルフサウナ状態で授業だ。最悪だ。こうなっては腹を括るしかないか…と思い、私は自分の席で碇ゲンドウポーズでチャイムが鳴るのを待っていた。
課外の1時間目は8:40にはじまる。時計の長針は8:35を指そうとしていた。教室の座席もクラスメイトでほぼ埋まった。私が密かにあきらめの境地に辿りつこうと覚悟を決めているとき、教室に滑り込んできた同じクラスの子が最後の悪あがきと言わんばかり(私にはそう思えた!)にエアコンの操作パネルに近づき、電源スイッチに手を伸ばした。その子に対し、諦めるんだ。今日のエアコンはこちらの言うことを聞いてくれないんだから! と声には出さず思ったのもつかの間。
ピ! ピィ……(起動音)
先刻の抵抗はどこへやら、エアコンは素直に稼働し始めたのだ。瞬時にクラス中に歓喜の声が溢れる。それをよそ目に私は、
「えぇ…」
とため息が出たのであった。